2023-7-18
結論から言ってしまうと、ミンクオイルは基本的にドレスシューズの甲革の手入れには使用しません。 なぜなのか、今回はミンクオイルの特徴と使い方の注意点をお教えします!
<シューケアグッズ> TY19 ¥770(税込)
昔から革のお手入れクリームとして定番のミンクオイル。そのそもミンクオイルとは、ミンクというイタチ科の動物からとれる天然の動物性油脂を用いて作られるレザーのケア用品(クリーム等)のこと。
主に油分の補給を目的として使用します。
適切な油分量が保たれることで革のしなやかさを保って革が長持ちしたり、傷や水への耐性が高まったり、味がでてかっこよくなったりというような効果が見込めます。
そしてミンクオイルの特徴は何といっても、革へとても浸透しやすいオイルであるということ。
この点がメリットであり、また注意が必要なポイントでもあります。
何に注意が必要かというと、塗る革によって、また塗る量によっては油分量が過剰になってしまうことです。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉があるように、油分の過剰補給は結果として革製品の寿命を縮める原因にすらなります。
色々と問題が出てくるわけですが、そのなかでも特に問題なのが、
・カビが生えやすくなる
・型崩れにより格好悪くなる
という点。
まずカビに関しては、革の油分が多くなると、ベタつくためほこりなどが表面に残りやすくなります。
そのほこりと過剰な油分がカビの栄養分となりカビの発生がしやすくなる。
ということです。カビが生えてしまうとカビの種類や程度によっては取り返しがつかなくなることも。
ぜひとも避けたいところです。
そして型崩れに関して、オイルをたっぷり塗って手入れをしながら使い込んだ野球のグローブを想像するとわかるのですが、ふにゃふにゃ、ぺたぺたになります。
ドレスシューズの甲革があの状態になってしまうと、上の革の部分が形を保てずにぺちゃっとつぶれてしまい、ピシッとした印象はなくなり、見栄えは悪いです。
一般的にドレスシューズに使われる革に関して言うと、ミンクオイルを常用すると油分が過剰になる可能性が高いです。
また、カジュアルシューズや婦人靴でも基本的には同様です。
じゃあなにに使えばいいの?というお声が聞こえてきそうですが、
ミンクオイルを使える(使う)のは、オイルレザーと呼ばれる元々油分量が多い仕上げの革や、かためで厚手の革など、基本的に革の厚みがあるものがメインとなります。
イメージとしては、メンズのカジュアルなブーツ、武骨な感じの靴、ワーク・ミリタリーテイストの靴
など。
⇩こういった雰囲気、革のものです
オイルが入ってくたっとした雰囲気や、オイルで色味が濃くなったりそういった感じがかっこいい靴に向いているということです。
逆に基本的にドレスシューズ含めきれいめなもの、ピシッと見せたいもの、クリーンな印象のものにはあまり使いません。
ドレスシューズには⇧のような一般的な靴クリーム(乳化性クリーム)がおすすめです。
上で挙げたような革の日頃のケアだけにしか使えないのかというと、実は他にも用途があります。
初めにお話ししたようにミンクオイルは油分の浸透がしやすく、油分を補給するという役割としてはとても優秀です!
(それゆえに革によっては常用すると過剰補給になってしまうのですが、、、)
ですので、普段はミンクオイルの使用をおすすめしない革のもので、
・長期間お手入れをさぼってしまった
・雨でびしょ濡れになって乾いた後
など革が乾燥しているとき、ダメージを受けているときに、革の栄養補給のために使用することがあります。
※この時革質によっては油分の吸い込みが強くなり、シミになる恐れがあるので、おすすめはまずデリケートクリームなどで水分を軽く入れて油分の局所的な吸い込みを防いでからミンクオイルを塗るとムラなくきれいに仕上げやすいです。
また底材が革のものに関しては、底材のお手入れとしてミンクオイルを塗るというのもミンクオイルの主な使用用途として一般的です。
革底は適度な油分があることでしなやかさを保ち履きやすいだけでなく、摩耗しにくくなり、耐水性も向上します。
ただここでも、塗りすぎには注意です!油分が過剰になると、革の底材もへなへなになり、どうしようもなくなります。大事に履こうとオイルの補給をしすぎて逆効果となると悲しいです。
僕の場合は、日ごろの革底のケアは革底用に販売されている栄養剤を塗ってケアをし、濡れてしまったあとや、すこし乾燥しているなと思ったときにミンクオイルを使用するというようにしています。
ミンクオイルだけで革底のケアをする場合は、塗りすぎないようにだけ気を付けていただければ大丈夫です。(普通に底材全体に行き渡る量を塗る分には問題は出ないと思います。一回のケアでそれを何重にも塗ったり、毎日のように底材にオイルを塗るというような具合でなければ大丈夫です!)
ここまでがミンクオイルの特徴、注意点、使用用途に関して長々とお話ししましたが、では実際にミンクオイルを使用してお手入れする際はどのようにすればいいかをお話しします。
基本的な流れは
ブラッシングでほこりを落とす
ミンクオイルを布か指で塗る
乾拭きで表面の余分なオイルをふき取る
という感じで結構簡単です。
①ブラッシング
表面や底周りに付着している汚れやほこりなどを馬毛のブラシでしっかりブラッシングをして落とします。
(汚れがひどい場合などはクリーナーを使って表面をきれいにします。)
②ミンクオイルを塗る
ミンクオイルを布にとって全体に塗っていきます。べたべた塗るのではなく、まんべんなく伸びきる量ぐらいで大丈夫です。布にミンクオイルを取る際も一度にいっぱいとるのではなく、少量ずつ布に取り、それをささっと均一に伸ばします。
(指で塗ると体温でオイルが柔らかくなり塗りやすかったり浸透しやすくなりますが、肌が敏感な方は肌のトラブルが起こる可能性もなくはないので、オフィシャルとしては布で塗る方法でおすすめしています。)
③少しおいてから乾拭きをして表面の余分なオイルをふき取る
この工程が重要です!
オイルを塗ってすぐの状態は表面がオイルでツヤツヤしていい感じに見えるのですが、この表面にツヤツヤしてるオイルをそのままにしていると、ベタつくためでほこりや汚れがとてもつきやすいだけでなく落とし辛くもなります。カビも生えやすくなります。
ですので、塗った後に浸透せずに表面に残ったオイルはしっかりと乾拭きでふき取りましょう!
少しおいてからと書きましたが、時間がない場合は両足ミンクオイルを塗り終わったらそのまま乾拭きでも大丈夫ですが、べたつきが強くて乾拭きがし辛かったりきれいになりにくいこともあります。
10分から15分程度置くと少し落ち着くのでそこから乾拭きをしてあげるとスムーズで、革のナチュラルなツヤ感も出やすいと思います。
(オイルを塗って一晩おくというやり方も聞きますが、基本的に塗ったクリームは必要な分は時間はかからずに浸透するため、長時間置く必要はないと個人的には思っています。)
昔からある定番のレザーケア用クリームのミンクオイル。
靴の量販店含め色々なところで見かけることからも「とりあえずミンクオイル塗っておけば、、、」と思われている方も少なくないのですが、実際には使う革や使い方には注意が必要でそれを間違えてしまうと悪影響を与えてしまうことすらあります。
ただ製品やその効果としては非常に優秀であるという点は間違いないので、正しい知識と使い方を知ったうえで使用して頂きたいという思いから少し長文ですがこの記事を書きました。
革は適切なケア用品で適切なケアをしていただくときれいに育ちながら長く使うことができます。
どれを使っていいかわからない、どう使っていいか分からないなどお悩みの場合は、いつでもリーガルシューズのスタッフにご相談くださいませ。
ミンクオイルでお手入れをする際におすすめケア用品はこちら⇩
・ミンクオイル
・馬毛ブラシ (ほこり落とし用)
・クロス (ミンクオイルの塗布用・乾拭き用)
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